ノアの箱舟。
それは聖書の中にかかれた1つの逸話。
俺はキリスト教信者でもなければ、熱狂的な聖書ファンでもない。
だからなぜ神様が地球を一度洗い流したのか、その理由は知らない。調べようとも思わない。
だが‥こうして人込みの中にいれば大体の想像はつく。
何よりも、ウザったい。五月蝿い。気持ち悪い。
神様もそうだったのだ。気持ち悪いぐらい増えた人間達を洗い流す。それは至極当然なこと。
誰もが思いつく最良の手立て…
それが行える手があれば行はずにはいられない。
全てを洗い流す、洗い流す、押し流す、押し潰す、飲み込む、打ち付ける、すり潰す、擦り切れる、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ…死ね。
自分が死んでもかまわない。
この歪んだ世界がなくなるというのなら喜んでこの身を投じよう。
ノアの箱舟がない現代で全てを洗い流す怒涛なる水の嵐を‥
こんなにも望んでいるのに‥
太陽は燦然と輝き、人波は途切れることなくうねり、ただその中の1つの水流として世界を生きている。
神よ、なぜ貴様は箱舟に人間を乗せた。なぜそれを許した。
なぜ蔓延ることしか考えない人間に箱舟を作らせた。
なぜノア達を乗せたのだ!
残虐に成り切れぬ神など人間より下級だと気付かぬか、周囲の敵意にぐらついた心は人間のように下級だと気付かぬか。
また蔓延った忌ま忌ましい人間達になぜ今なお「生」を与えている?
いつでも殺せる首輪(重力)をも人間は断ち切れるようになり、その檻(地球)さえも腐食させ、錆びさせる人間になぜとどめを刺ない!
臆するというなら私がやってやろう。
出来ぬというなら私がやってやろう。
させぬというならお前を殺してやる。
今、お前の下へといくぞ!
同時にこの雑踏のうねりからも開放される。
残り僅かだぞカビ達よ!
先ずは戒めに私の肉塊をうねりの中に投げ打とう。
そのうねり止めてやる‥‥
俺は途切れぬうねり目掛けて空を飛んだ。