川のせせらぎがここちよく五月晴れを木々が隠してくれた午後だった。
「そんなことないよ」
私は桜に精一杯の笑顔で答えた。
「桜、中野と知夏は両想いだと思うよ」
「もう何言ってんの」
「本気だよ」
「他に好きな人いるんだよ」桜があまりにも真っ直ぐで私は少し胸が痛かった。
「桜、怖いんだ」
「なにが?」
「知夏ちゃん最近、久遠と仲良いから」
「理沙の好きな人だよ」
私は諭すように桜に言う
「わかってるけど、久遠は」それでも桜は言いたそうにしていると樋口君が桜を誘いにきた。
私は気を使わずにと桜を送り出した。
一人になるとなんだか気持ちが不安定になった。
「私はどうしたい…」
つぶやいても答えはでない
「あんたなんて最低」
バンッ
派手に男が女にたたかれたきまづい状態。
まもなく女は立ち去り、私は男と目があった。
それが大倉悠介との初めての出会いだった。
「大丈夫?」
なんとなく声をかけた。
すると大倉は私のそばまで降りてきた。
「痛い笑」
その笑顔がにくめなくて私はハンカチを濡らして差し出した。
その手を自分のほほにそえると目を閉じた。
とてもきれいな顔なのに、私の手を握ってはなさぬ手は大きく男らしい。