「朝練の時から元気なかったけど、昨日の試合のエラーまだ気にしてるの?」
真希が俺の顔を覗き込んできた。
真希は幼なじみであり彼女でもある。
十年以上一緒にいるわけだからお互いの気持ちや考えなんて簡単に分かる。
「分かったよ。真希には叶わないな。」
「それでよし。それにエラーした後奮起してホームラン打ったじゃない。」
俺が真希と野球の話が出来るのは中学の時から俺と同じ部活に入りたいと言ってマネージャーをしてくれたから。
初めは野球のやの字も知らなかったのが今では下手な部員よりも詳しいだろう。
「まぁな。真希にそう言われると楽になるよ。」
「どういたしましてぇ。」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り真希は慌ただしく
「また部活でね。」
と言って笑顔で手を振りながら自分の教室へ戻っていった。
「また後でな!」
俺も自然と真希と同じ仕草で答えた。