子供のセカイ。7

アンヌ  2009-04-14投稿
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耕太は鋭い光を見た。
太陽を反射してきらめく刃が、ものすごいスピードで眼前に迫ってくる…。
ピタッ。
「……っ!」
ハッと息を吐いて、耕太は石段の上にがくりと膝をついた。覇王の剣は、耕太の鼻先ギリギリでピタリと止まっていた。
「……うまく行ったか、舞子……。」
見上げれば、覇王は空を仰いで嬉しそうに微笑んでいた。その顔は美しかったが、どこか残忍だった。
覇王はニヤリと笑って耕太を見下ろす。
「貴様、命拾いしたな。舞子が成功した以上、もうここに用はない。」
耕太はようやく事態を飲み込むと、ぎっと歯を食いしばって覇王を睨み上げた。
「てめぇ、舞子に何させる気だ……!」
「貴様には関係のない事だ。」
不敵に笑って立ち去ろうとした覇王だったが、ふと足を止めて眉をひそめた。
「ん…?“闇の小道”に、誰かもう一人入り込んだようだな。」
思い当たる人物は一人しかいなかった。
(美香だ…!)
耕太はびくびくしながら覇王を見つめる。覇王はそんな耕太の反応に気づいて笑みを深めた。
「どうやら舞子の姉らしいな。バカな小娘だ。“闇の小道”は“子供のセカイ”へ通ずる道……。舞子のような特別な力がなければ、向こう側へ抜けることも、そこから出ることも叶わぬ異空間。……舞子の姉は命を投げたな。」
ハハハハッと高笑いした覇王に、耕太はカッとなって牙をむいた。
「笑うな!!美香がどんな思いで舞子を守ろうとしてると思ってんだ!」
耕太は折れた枝を握りしめ、二本の太い鉄の槍に変える。
「くたばりやがれっ!!」
血のにじんだ腕や肩がズキズキと痛んだが、耕太は最後の力を振り絞って槍を振るった。二本の槍が至近距離から覇王の胸を貫く――はずだった。
「……!」
耕太は呆然と宙を切る槍を見つめた。そこに覇王の姿はなかった。ただ美しい光の粒子が、静かに、きらきらと石段の上に降り注いでいるだけだった。
「…っくそ、美香!!」
耕太はよろよろと立ち上がると、傷ついた足で石段を登り始めた。

* * *

そこは真の闇だった。
美香は息ができないほどの圧迫感に襲われ、ぶるぶると震えてくる自分の体を抱えて歩き続けた。
舞子の後を追って闇色の靄に飛び込んだまではよかった。ただ誤算は、舞子の姿を見失ってしまったことだ。



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