1日1日、着実に日が過ぎていった。
私学大会も明けて少したった。
もうインターハイ予選まで1ヶ月もない。
団体戦のメンバーももう決まっている。
授業が終わってすぐ、職員室に向かった。
「失礼します。」
修二は誰に言うわけでもなく言った。
「相葉先生はいませんか?」「おっ、嘉谷君。大会の申込書持ってきた?」
相葉先生が言った。
「はい、一応こんな感じでお願いします。」
修二はそう言ってプリントを差し出した。
この人は相葉道則(あいばみちのり)先生。
うちの柔道部の今年度からの、いや、実際は去年の中頃からの顧問だ。
去年から新任の教師として入ってきた。
普段からメガネをかけているが、元の素材がよく、イケメンだ。
しかもメガネが似合うから余計にカッコよく見える。もちろん女子の人気も高い。
「先鋒(団体戦で一番最初に試合をする選手)は新藤君でいいの?中堅(団体戦の三番手)の山下君を先鋒にしたほうがいいんじゃないかな?」
相葉先生は柔道のことは詳しくない。
でも実際、頑張ってくれてるようだ。
団体戦では強い選手や、軽量級のスピードのある選手をもってくることが多い。先生の言う通り、悠を先鋒にもってくるのが普通だ。
「今回はまだ白帯の河野が出ますから。河野は背が高いし、力もありますけどまだ経験不足がところがありますから。河野を次鋒にして、本来、次鋒にする新藤を先鋒に回しました。」
「そっか、そうだね。そのほうがいいかも。」
相葉先生が言った。
「それじゃ、申込書よろしくお願いします。」
「わかった。前はごめんね。私学大会のこと知らなくて。」
「いえ、聞かなかった俺らにも問題はありますから。それに先生は柔道についてあまり知らないのに頑張ってくれてますから。」
「そんなことないよ。」
相葉先生が少し照れて言った。
「それじゃ、練習行きますんで。」
「うん。僕も仕事が一段落したらまた見に行くよ。」
「よろしくお願いします。失礼しました。」
そう言って職員室を後にした。