子供達に聞かれた事がある。
「信じる神の姿は、どんな形なの?」
かつて、私自身、信じる場所があった。形や姿では表現しきれない、全ての場所。
生まれてから少しづつ変わっていく見慣れた景色。私を知っている家族や周りの人達。
空は時折、色んな表情を見せ、人は、怒ったり、泣いたり、笑ったり。そんな日常を、自分が生きる場所を”幸せ”だと思えた。
そんな時、人は初めて”神に感謝したい”と思う。
それは曖昧で、姿や形が無いものだけど、確かに自分の中に”神”という存在がある。
それが、私の信じる神の存在だった。
・・・でも、全てを失ってしまった。
そこにあった、空・空気・景色・人・家族。
そして”神”の存在・・そう、全て。
私に残されたものは、兄様の剣と、十字型の鍵。そして、無知で無力な私自身。
帰る事の出来ない場所。
私は何処へ行けばいい?
私は何をしたらいい?
私は何を信じたらいい?
私は何の為に生きたらいい?
私は、死んでしまったほうがいい?
「”お帰り”と言えばいい。お前には意味が無くても、私には、”ただいま”と言える人が存在する」
・・・知っていますか?憂牙。
あなたの言葉が、神以上の意味をもっていたことを。
タルトの街一番のホテルで、盛大で華やかなパーティーが開かれていた。豪華な料理に、豪華な酒。そして、名だたる財界人、著名人が顔を揃えていた。
一際目立つ白いスーツを着た主催者、マーカスが、隣に居る美しい女性に言った。
「どうだい。素晴らしいパーティーだろ?」
黒髪の腰まである長い髪。スパンコールの散りばめられた大きく胸元の開いた黒いロングドレス。赤いルージュが目立つ美しい女性が、マーカスにそっと寄り添った。
つづく