夕暮れのオレンジが教室の窓からさして私と久遠の影を大きく映す。
「どうしたの?」
怒ってはなさそうだけど、いつもと違う雰囲気だ。
「今日のことなんだけど」
謝るとか?でもそれって久遠らしくない…
「ぅん」
「…」
黙って私をまっすぐ見ている。私は動けなくて…やたらと胸がドキドキした。
たまらず私がきりだす。
「呼びにきてくれてありがとうね」
「えっ…あぁ」
…また二人を沈黙が包む。教室をさしていたオレンジが段々遠ざかり、暗くなるのを迎えいれる。
「理沙と桜、待ってくれてるから…いくね」
私は机から忘れ物をとりだし、教室をでようとした。
「前田、今日話してた奴と知り合いなのか?」
「ううん、今日初めてしゃべった…」
「なら、気をつけろ」
「え?」
そう言って久遠は私に近より、手をほほに触れた。
「一応女なんだからな」
と言ってほっぺをつねる。
「痛っ!何するのよ?」
すると久遠は笑って
「じゃな」
と、先に教室から出ていった。最後はいつもの久遠だった気がする。
私も急いで、理沙達の所に戻った。
男の子は時に不思議だ。
動けない雰囲気を作る。
私はただ戸惑うばかりだ。