遼一のメールには、<勘違いしてたよ。ごめんね>と最後に書かれていた。
美穂は、ぶるぶると顔を左右に振った。いやいや、謝らなくていいっすよ。ああ、菅野じゃなくて神野で良かった。お父さん、お母さんありがとう。
いや、こんな事考えてる場合じゃないってば。早くリプライしなきゃだわよ。あらら、言葉が何か変よ。
落ち着くのよ、美穂。頑張れワタシ!
<ええ、よく間違われるんですよ。だから気にしないで下さいね。遼一さんもゴルフの人と間違われるんじゃないですか?遼一さんの方が元祖なのに、何か嫌ですねぇ。>
送信ボタンを押す。
ドキドキする。ヤバい。返信した文章、変だったかなぁ。
美穂は遼一から来たメールを何度も繰り返し読んだ。遼一を心に思い浮かべる。あの真っ直ぐな視線。私の格好悪い所だって見られたって構わない。
いろんな空想というか妄想をしていると、携帯が鳴った。遼一からメールだ。
<そうそう!ナントカ王子でしょ?一文字多いんだけど。ハローワークなんかで名前呼ばれるとき、一瞬みんなに見られるんだよね。あんまり普段は気にしないんだけど、病院とかでは嫌だなぁ…>
そういえば遼一さんって体を壊して仕事辞めたんだっけ…。今でも通院してるんだ…。心配だわ。
っていうか、ワタシ今、男の人とメールしてる。何か電話するより、メールの方が楽しい。
上がり症の美穂にはメールの方が向いていた。自分の考えてる事を、確認できるから相手に伝えやすい。ビバ携帯メール!
次は何てリプライしようか…?ワタシ、ウザくないかなぁ。
<お身体の具合はどうですか?無理はしないでくださいね。心配です>
送信ボタンを押す。世の中の人って、みんなこんなにドキドキする楽しい事をやってたのか…。美穂はほとんど家族としかメールをしていなかった。相手が変わると、こんなに楽しいなんて知らなかった。