「月が、ふたつある。……月は、ふたつもあっては、いけないんだ」
そう、誰が言った?地上にふたつ目の月が現れ、しばらく経つと言うのに……。
ふたつ目の月が、だんだん大きくなり。多分、だいぶ前から、ふたつ目の月は現れていただろうに、太陽が昇り、沈む間は、現れていた月には気付かないだろう。
いつの間にか、ふたつ目の月が現れた事にも。
「月がふたつある……」「月は、ふたつもあってはいけないんだ」
ああ、誰も気付かないと思っていたのに、気付いたのか。
陽子(ヨウシ)。陽子がそう言った。
太陽の子供。陽子。
お前は、なんで、天から地に産み落とされた、たかが、産み落とされた可哀相な太陽の子供なのに、どうして、気付いた?
月が、ふたつもあってはならない事を……。
陽子。
太陽の子供。
月がふたつ現れようとも、お前がいる限り、太陽は存在するだろう。
月が、この世界を支配したくとも、彼等はお前の存在無しには存在し得られない。
あわれ、月の一族よ。
天から、歌がきこえる。