数分経つと曲が終わり、彼女がイスから降りた音がした。
…足音が、僕に近づいてきた。
僕の席の後ろで、足音が止まる。
『いらっしゃいませ…。初めてお会いしますよね?』
後ろから聞こえたその声に、僕は息を呑んだ…。
もう何年も聞いていない…。
けど、絶対に忘れることの無い…
懐かしい…その透き通った声…。
まさかと思い、後ろを振り向いた。
小さな照明にあてられたその女性は、君にそっくりだった…。
華奢で小さな躰…。
白のワンピースから覗かせる色白な肌…。
汚れを知らない…その大きな瞳は、僕をまっすぐに見つめていた…。
彼女の黒い瞳から、視線を反らすことができなかった…。
今までの現実が嘘のように…全てが、夢だったように…。
…そこには…“君”がいた…。