十字路とブルースと僕と俺 32

ティシュー  2009-04-18投稿
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ギターを手にして早30年。近頃になって、ようやく自分の思い通りのものが弾けるようになってきた。こんなに歳を取ってもまだギターを続けているとは、考えもしていなかった。大体、音楽なんてものには縁のない青春時代を過ごしてきた。ギターといえばテレビでみるギター漫談の時に使われている楽器…ぐらいにしか思っていなかった。

ギターを始めたばかりの頃は、ちょっとしたお師匠さんがいた。そいつ(師匠なんだけど歳も近くて、まあ友達みたいなもんだったから)のプレイをみたのがそもそもギターを始めるきっかけだった。そいつのギターはギターに非ず。そいつの姿は人間に非ず。そいつのしゃべる言葉は地球語に非ず。とまあ、とにかく変わった奴だった。

はじめの頃は自分でも驚くほど、めきめきとギターの腕が上達していった。もちろん師匠のマンツーマンの指導があってこその結果だということは言うまでもない。自身のギターテクニックもさることながら、人に指導するテクニックもこれまた抜群だった。もちろん前に述べたとおり、奴の言葉はおれには理解出来ない。奴も同様におれの言葉を理解していなかった。それでも意思の疎通にはこれといって困らなかった。ギター一本でコミュニケーションの全てをまかなえていた。

異常に暑い日の続く、夏のことだった。



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