「はーい、写真撮るから並んでー」
先生の呼び掛けで皆ぞろぞろと列を作っていく。
今私たちは、沖縄にいる。今日はM中学校の修学旅行だった。
そんな時、先生があることに気付いた。
「おい、Nはどうした?」
N、というのは、東京からの転校生…だったはず。
約三年間、一度も話したことがない。
暗い子ではあるが、別にいじめなどはなかったようだ。
そのNが、突如失踪してしまった。
と、思ったら、近くの物影に隠れていた。
「何してるの?皆待ってるよ?」
クラス委員である私は、率先して話しかけた。
「……怖いんだ」
「え?」
「写真に撮られて、命を吸い取られちゃうのが」
「……プッ」
思わず、吹き出してしまった。
「ちょっとそれ、いつの話よ?ていうか思いっ切り
迷信じゃない」
「え?そうなの?」
「そうよ?本気で知らないの?なら説明してあげるわよ。
カメラが日本で使われるようになった時、まだ戦争は終わってなかったの。それで、戦争に出る前の兵隊さんは、まぁまず皆、思い出っていうかなんていうか、何か残したい、って思うでしょ?
で、写真を撮る。そして、沢山の人が死ぬ。
そしたら、そんな変な噂がたっちゃったってわけ。
ただの確率の問題なのにね」
「ふーん…そうなんだ…」
どうやら納得してくれたようだ。
本当は、全部作り話なのだが。
人を納得させるためには、それらしい話を聞かせるのが一番手っ取り早い。
Nが加わり、
皆並びなおす。
「ハイ、チーズ」
カシャッ
フラッシュで、一瞬目の前が真っ白になって……
その次の日、あるニュースが流れた。
「次のニュースです。
沖縄県で、修学旅行で訪れていたM中学校の生徒が、ひとクラス、突然失踪しました。
沖縄県警によると、
同行していた教諭は、
同県警の質問に『カメラ』とだけ答え、黙秘、あるいは発狂を繰り返しているようです。同県警は同教諭を事件の容疑者として捜査し、どうじに精神異常の可能性もあると見ています。
次のニュースです……」