黒木両の物語

☆ホトケノザ★  2006-07-12投稿
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(みーんみーんみーん…)
外では夏の一瞬を逃さぬと、全精力をはたいて、元気にセミどもがやかましく鳴いていた。
それを部屋の中から聞いていた俺はセミとは正反対に、今にも死にそうな声で鳴く…。
「暑い…夏は暑いよぉ〜」俺は拳ほどの大きさしかない、小さな扇風機を片手に、部屋の真ん中でゴロンと寝転がっていた。大きく開けた窓からはほんの少ししか風は入ってこず、部屋の中はまるでサウナのような暑さだった。畳の方に着けていた背中を離すと、急に背中がヒヤッと涼しくなる。これが気持ちいい…。さっきから何十回もこの行為を繰り返しやっていた。ふと気になって俺が寝ていた畳の方を見ると汗で黒く滲んだ跡がくっきりうつっていた。…もしこのまま繰り返し畳に汗を付け続けたら…そのうちキノコとか生えてくるのかも…。そしたら少ないオカズにも風情が出る…。その考えをブンブンと頭をふって停止させる。その時額から汗がシャワーのように飛び出した。冷静になって考えると、俺の体から出来たキノコ…。「そんなえたいの知れない物なんて食えるかぁッ!!」独り言を叫び、ぐわっと両腕をあげ、足をバタバタばたつかせた。ジジッとセミが飛んでいく音が聞こえる…。
「…学校行かなくちゃ…」ヤットコさその考えにいくつく。まだ今日は夏休みでは無かった。まぁ夏休みまで日読みになっているが、学校にいかなければならない…。腕時計を見ると今は午前11時を回った所だった。…別にサボリではないよ。今日から新しい学校へ行くのだ。だから少し位の遅刻は許してほしい。それにさっき電話があって、とても学校の先生では、若すぎるような口調で「君ってさぁ〜ホントに黒木両君〜?」と俺のケータイにかけておきながらそう言った。「は、はい。そうですけど?」俺はドギマギしながら答えた。…今日は引っ越しが忙しいと嘘をついて、サボろうと思っていたのだ。こんな暑い日に学校へ行くために歩きたくない…。すると女の人は俺の考えをそれをみすかしたように「今日は暑いわね…?」と言った。心臓が止まるかと思った。心を読まれたとこともビックリしたが、女の人の声が物凄く近くで聞こえたのだ。ビックリして後ろを振り向くとそこには誰もいない。気のせいか…と思い、元の方へ視界を戻すと……。今度こそ絶対に心臓は1、2秒は止まったと思う。俺の頭2つ分低い場所にスーツを着た女の子がいた。「学校サボッちゃだめよ〜」

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