すっかり夕暮れの西日が窓から差し、教室はオレンジ一色に染まる。
「理沙にキスしたでしょ」
私が久遠を嫌いだと思ったのは、久遠が理沙にキスしたのにはっきりした態度をしないからだ。
さすがの久遠も顔色が変わる。人のことうだうだ言うからよ。
だが、久遠が切り出したのは私が予想以外な言葉だった。
「…だったらなんだ?」
「え?…だったらって…」
何こいつ?しかも気のせい?久遠の目が色が変わった気がする。
すごく冷たい…蒼い目。
そして次の瞬間…久遠の唇は私の唇に触れた。
そして手は首筋に触れ、顔を固定される。
息が止まるかと思った。
拒めない自分にも驚いた。ほんの2、3秒のことが、スローモーションのように長く感じられた。
久遠は唇を離すと笑って、私の顔に手を添えたまま
「キスぐらい…いつでもしてやるよ」
と言った。初めてのキスだったのに…
涙目な私をみて嬉しそうな久遠を鬼だと思った。
私は教室から飛び出した。
まさかそんなとこを理沙が見ていたなんて…知る由もなかった。
飛び出したもののいくとこなんてなくて…
「前…田?…」
混乱する中、私は一番会いたくない人に声をかけられた。