運命は皮肉なもの。
神様は意地悪だ。
誰かにすがりたい私に声をかけてきたのは
「…中野」
中野は明らかに様子のおかしい私を気遣い
「ちょっと座る?」
と一組の教室に入れてくれた。そして私が話しだすまで何も言わずそばにいてくれた。
「ごめん…ごめん私…」
「何謝ってんだよ」
そして懐かしい笑顔を見せてくれた。
中野と理沙も残って提出書類を書いていたらしい。
「瑞木、前田の様子見に行ったんだけどな」
…もしかして…見た?
嫌な予感が脳裏をかける。
「久遠となんかあったか?」
「…うん」
それしか言えなかった。
特に中野には知られたくない…そんな気がした。
「あいつ悪い奴じゃないんだけどな…」
と、私の頭をポンポンと手でたたいた。
大きな手が懐かしい。
なぜだが無性に泣きたくなって…目からは涙が止まらない。
「ほら、ティッシュ」
「…ありがと」
そして今度は髪をなでて
「全部泣いちゃえ」
と励ましてくれた。
外はすっかり暗くなって教室の電気が音をたて…気分が遠のいた。
「目覚めた?」
「うわっ…ごめん」
寝た私を中野はずっとついててくれたみたいだった。
「ありがとう…」