〜〜序章〜〜
「ハァッ、ハァッ、ハァ…」
太陽が地平線にその姿を隠し、辺りは暗闇に包まれていた。
周りにある木々は地面に影を落としている。
その中を、一人の男が息を切らしながら走っていた。
「ここまで来れば、奴らも諦めるはず…」
男は右手に剣、左手に巻物を持っている。それは、この国の命運を決める、とても重要なものだった。
「これさえ…。これさえあれば…」
男は辺りを用心深く見ながら、一人そう呟いた。
人の気配がないのを確認し、呼吸を整えようとした時だった。
「!」
突然、男の横から、赤い服を着た人間が現れた。
「お前…」
男は、赤服の男に見覚えがあった。
「何故だ!」
男は自分の目の前にいる人物に問いかけた。しかし、相手からの返事は無かった。
「…俺を殺す気か?」
やはり返事はない。
「俺からこいつを奪う気か?」
その言葉が合図であったかのように、相手は腰の長剣を抜いた。「お前らの好きにはさせん!」
男は静かに、たった一言呟いた。
「バニッシュ!」
その瞬間、男の手の中にあった巻物が、消えていた
それでも、赤い服の男は距離を詰めて来る。
「絶対、お前らになんか渡さねぇ!」
そう言うと同時に、白い閃光が閃いた。
男の命は、その瞬間絶たれた。