「とても素晴らしいパーティーだわ。あなたの人望と、この会社を3年でここまで成長させた才能に、惚れ惚れしてしまうわ」
「私も、このパーティーを開いたことで、あなたのように美しい女性に出会えて、とても、ラッキーだと思っているよ。それも全て、あの”マリア象”のおかげだ」
そう言うと、寄り添う女性の腰に手をあて、パーティー会場の外に出た。
マーカスは女性の耳元でささやく。
「‥君だけに見せてあげよう。私の”幸運の女神”を‥」
「まあ‥うれしい。ここに、その女神は居るの?」
「ああ。片時も放さず、持ち歩いているんだよ」
マーカスと女性は、ホテルの最上階直通のエレベーターに乗り込んだ。
「その女神とは、どこで知り合ったの?」
「3年前に、名も無い美術商から手に入れた物でね、それを手にしてから、あれよ、あれよと上手くいってね。あっという間に、タルト1の貿易会社に成長したんだよ。私にとっては、まさに”幸運の女神”だよ」
「‥まあ、素敵。早く会ってみたいわ」
ポーン。
エレベーターはホテルの最上階65階に着いた。
扉が開くと、両脇に体格の良いボディーガードが立っていた。更に、スイートルームの扉の前にも、二人、立っていた。
マーカスが、部屋の前に立っている二人に向かって、軽く左手を上げると、ボディーガードは、扉の前を空けた。
マーカスはカードキーを差し込み、スイートルームの扉を開けた。
「凄いわ。あなた専属のボディーガードが居るなんて」
「このホテルには、15人のボディーガードが居る。なにせ、私の女神も一緒だからね…さあ、どうぞ」
スイートルームの中の一番奥の部屋の扉を開けた。そこは薄暗く、二つの小さなライトの光と、窓から見える夜景の光が目立って綺麗に見えた。
「‥あら、女性を、いきなりベッドルームに通すなんて、どういうつもり?」
女性は不敵な笑みを浮かべ、マーカスを見た。
「‥ほら、見てごらん。ベッドの横にあるナイトテーブルの上を。あれが正真正銘、私のマリア象だよ‥嘘はついていないだろ?」
そこには、確かにガラスケースに入った、木彫りの20?程のマリア象があった。
「‥君も、そのつもりで、私に近付いて来たんだろ?」
つづく