「姫。…玲と彼女って、付き合ってから10ヶ月たってるらしいよ」
私のことを『姫』と呼ぶのは、今のところ二人しかいない。
一人は今付き合っている桜田優司、もう一人は今話している佐々木弘人。
そして、『姫』こと私、山下秋那は、今信じられないことを聞いた。
「どうゆうこと?だって、その頃って…」
「だから言いたくないって言ったのに…。傷つくのは姫なんだから…」
そう、10ヶ月前は、まだ私と玲は付き合っていた。
ちょうど、6月頃の話だ。
「…二股?」
「…そうゆうことになる」
雷が落ちた気がした。
弘人の言っていることが嘘だと思う反面、あぁ、やっぱりなと思う自分もいた。
ちょうどその頃から、玲の態度がそっけなく感じられるようになったから。 「…何だ。そうだったの」
「姫…?」
「大丈夫だよ。別に気にしてないから」
そう言って、無理に明るくふるまった。
…裏切られたんだ。
…好きだったんだけどな。
…まぁ私から振ったんだけど。
「姫。玲と話したら?言いたいこと、あるでしょ?」
この声は…優司だ。
「何が?別に何もないよ?」
「だめだ。話をしなさい!」
そう言って、無理矢理玲との電話をつないだ。
『…何』
「10ヶ月もだましてくれてアリガトウ」
『…別にだましてたわけじゃ…』
「じゃ、何なのよ」
『いや、そうなんだけれど…』
もう、いい加減にして欲しかった。
『でもさ、そっちだって一緒だろ?』
「…何が」
『そっちだってさ、もうどーでも良かったんだろ?』
「違うし!私はずっと待ってたんだよ!玲のこと、ずっと…。信じて…、待ってたのに…」
『…え?』
「ずっと待ってたのに…。何なのよ!」
『そっか…。…ごめん。…本当にごめんね』
「…何で謝るのよ!…何で…」
「姫…。大丈夫?」
「優司…。ありがとう。ごめん。本当、心配かけてごめん」
「…無理すんな」
そうして、私は優司の前で泣いた。
思いっきり、涙が乾くまで。
そして、その後優司がかけてこなくなるとも知らずに…。