「それで、死神になるってわけ?」
「うん、なるよ」
「…………」
真っすぐな目をした少女、真矢の目の前にいる友人は長いストレートな茶髪を指に巻き付け、ふぅっと深い溜息をつく。
「あ、そう…真矢がいいなら、あたしは何も言わないけど…」
「じゃあ黙って見ててね?」
「警察が来ても知らん顔しておけばいいのかしらあたし」
「そうそう」
「……ねぇ、やっぱり考え直さない?だって、人殺しだよ?本当の死神なら捕まらないけど、残念ながらあなたは生身の人間」
「そんなのわかってる」
「…っ…わかってるなら尚更!どうして…っ」
「だって」
あの人との約束なの。
その言葉は言わずに真矢は友人の奈保から顔を逸らし、図書室の席を立ち上がった。
「じゃあ行くね」
「待って真矢!そんなにその人に怨みがあるの!?」
珍しく誰もいない部屋に彼女の声ははっきり真矢の耳に届く。
怨み?
そんなものない。
むしろその逆なんだよ。
「そんなんじゃないよ。…ごめんね」
「真矢…!」
真矢は奈保を振り向かず夕方の学校を出た。