・舞と別れてから十日程して舞の部屋にあった僕の荷物と一緒に手紙が添えられて送られてきた。僕は一つ一つ荷物を片付けながら舞と出会った日からこの間の別れた日までの事を思い出していた。片付けた荷物の中には僕がクリスマスプレゼントに贈ったバッグと二月の誕生日にプレゼントとして贈った腕時計も一緒に送られてきた。荷物を全部片付けてから最後に手紙を読んだ。読んでいるうちに涙が溢れ出てきた。そして、最後に見た舞の顔を思い出し、“こんな不甲斐ない自分を本気で好きでいてくれたんだな”と改めて思うと涙が止まらなくなった。
・舞と付き合う以前の彼女には僕がフラれた。仕事の都合上、お互いすれ違いが多い事であまり会えないから終わりにしようと告げられたのだ。僕は反論する事なく素直にその申し出を受け入れた。もちろん、傷つき悲しみを覚えたが彼女から別れを切り出されたのに涙の一粒もこぼさなかった。まだ、その時は“恋愛なんて所詮こんな物だ”と軽く考えていたのだろう。だが、今回は自分からフッといて涙を流してる。
・手紙を読み終えてから僕はしばらく部屋でぼぅーとしていたが今の気持ちを誰かに聞いてほしくなって携帯電話を手にした。それから剛に電話をかけた。五回目のコールで剛が電話に出た。
「はい」
「あっ、俺だけど今、電話大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。どうしたんだ?元気がない声だけどなんかあったのか?」
涙を流した後の声だったから僕の元気のなさを悟ったのだろう。僕は舞から荷物と手紙が送られてきて切なさに溺れ、悲しみに明け暮れている今のこの気持ちを全部話した。剛はこの間と同じように熱心に僕の話しを聞き、電話をかけて四十分程してから“今から出て来れるか?”と、問うてきた。僕は“大丈夫だ”と言って剛の指定した場所に足を向かわせた。