亀山はそう言い残すと、小走りで二人の元から去って行った。
残された二人は、しばらくその場に立ち尽くしていたが、やがてミユキが口を開いた。
「行こうよマモル。もう、ここまで来たら行くしかないよ」
「何だか怪しいんだよなぁ…」
マモルはそう言いながら、歩き出したミユキに渋々ついていった。
亀山が指し示した鉄の扉は、賑やかな空港ロビーの脇の通路の奥の、明かりの無い袋小路の一角に存在した。
恐る恐る扉を開けたのは、ミユキだった。
「ヨイショ…」
ミユキは細い身体一杯を使って懸命に押すと、扉の先は又しても薄暗い通路が続いていた。
50mにも及ぶ長い通路の先には、搭乗口と思われる小さな出口が明るく光り放っており、ミユキとマモルのすぐ目の前には、まるで物干し竿のような検査ゲートが立ちはだかっていた。
「これが…ゲート?」
マモルが言った。
「そうです、コレがゲートです」
突然、真横で声がした。
二人が驚いて振り向くと、通路の脇に立っている一人の男がいた。
「さっきは当選オメデトさん!これから楽しい長旅を、どうぞ二人で楽しんで!だけど出掛けるソノ前に、こちらでチェックを受けてって!」
このちょっとイラッと来る七五調。先程の抽選会場の男だった。