木々が鬱蒼と生い茂っており、昼間でも薄暗く感じる。
この村に来たばかりの人間なら、迂闊に入ろうとはしないだろう。
しかし、姿を現すのは大樹と猪、熊や昆虫ぐらいなもので、至って危険はない。
つまり、外見と中身は一致しないのだ。
それどころか、美しい鳥や澄んだ小川など、行く時々に人々の目を楽しませ、うっかり迷いこんだ旅人に安らぎを与える。
「やっぱここは何回来ても落ち着くよな〜」
クリスはうーんと背伸びをし、辺りをキョロキョロと眺める。
「あぁ、そうだな」
ユアンも同意した。
「ほら、薬草を探すぞ」
二人は、川のほとりに向かった。
「おっ、いっぱい生えてる」
「春だからな」
一面に小さな青の花が咲き乱れ、蝶や蜂がせっせと蜜を探し回ってる。
「ちょっと失礼〜」
そう言ってクリスはどんどんと歩を進める。
「どれ位あればいいんだ?」
「五本もあれば十分だろう」
「かーっ!謙虚だねぇ」
「なくなったら他の人達が困るだろ?」
まぁ、そうなんだけどさぁ、とぼやきながら草をかきわける。
「にしてもさぁ…」
「何だ?」
「この空の下で戦いが行なわれるんだろ?何かさー、やだよな」
「そうだよな。何とかなればいいのにな」
今、この世界では大戦争が起きている。
なぜ始まったのか、何が原因なのか、忘れてしまう位昔からあるものだ。
「いい加減にすればいいのになぁ」
「そうだな」
一本、二本…。
薬草をとっている時のことだった。
「…ん?何だ、これ」
ユアンは地面に落ちている物を拾った。
「何だぁ!?その汚ねぇ布切れは!!」
クリスの言っていることは的外れではなかった。
手の平にちょうどおさまる程度の大きさ。
細く巻かれた巻物状になっている変わった物だった。