航宙機動部隊前史後編・44

まっかつ改  2009-04-25投稿
閲覧数[531] 良い投票[0] 悪い投票[0]

銀河元号一六三三年・こうして誕生したのが星間軌道公社《URPC》だった。
設立当初は社員数五百人と言う、その事業予定規模からすれば実にささやかな出発だった。
権力や権限の集中は極力避けるべきと言う人類総会体制の、それは知恵であり産物であった。
だが、初代総裁となったV=ワタナベは、早くもこう予言している。
【今の我が社はまだ種に過ぎない
だが、それは全銀河をその枝葉で覆い尽くすとんでもない巨木の種である】
そしてその予言が実現を見るのに、一星紀を待つ必要も無かった。

人類総会が進める航宙植民事業は、古地球時代の治水や土木建設と、あらゆる面で酷似していた。
莫大な人と金と、そして何よりもそれ等を束ねるだけの権力が必要だったのだ。
人類総会自体はそれを最小限しか持たないのを根本理念に据えていたし、今更宙邦主権の復活等、論外だった。
そこで、半ば仕方なく、実際には特に時代が下る程積極的に、当初の方針とは裏腹に星間軌道公社がその受け皿となって行くのだ。

それはまず、一連の買収及び吸収合併劇から幕を開けた。
星間移民公社・総合航路警備安全保障・銀河宙災保険、いずれも経営は行き詰まり、星間軌道公社の申し出に渡りに船とばかりに飛び付いた。
そしてそれは、外宇宙への人類進出の一本化を意味していた。

星間軌道公社は、間もなくネット集合体や宗教界と肩を並べるマンモス組織にまで成長を遂げ、銀河随一の名門企業としてユニバーサルエリート達の代表的就職先となるのである。
その規模は、銀河元号一七0七年時点で直属社員数六八0万人・系列一八三000社・四百の星系を開拓し、二0七の惑星に八十億人の入植者を送り込み、九つの産業船団を中核に三百万隻の恒星間宇宙船を擁し、自前の軍隊《公社軍》まで抱えると言うお化けっぷりを誇るまでになっていた。
並の国家が束になっても敵わない勢力だ。

流石にこれは危ないと慌て出した宙際世論を背景に、公社の株式の独占禁止が打ち出され、その八割までを一般定額小口投資家の分とし、一人二口迄と制限が設けられ、更に株主総会の投票権は投資額に関係無く全員一票ずつと言う厳しい制約が課せられ、徹底した情報公開と言うおまけまで付けられた。
この改革によって、一部の者による会社の私有化や暴走と言った懸念は懸念の内で終わった。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 まっかつ改 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ