少しの沈黙の後人審士が話し出した。
「早く戦闘を終わらせたいと思っているな。」
「…ああ」
大笑いしながら人審士が返す。
「無意味だ。お前では俺には勝てないよ。この塔ができて一千万年、俺が敗北した回数はたったの二回だ。お前も何度かここに来たがただの一度もお前は俺に勝っていない。」
「負けたら死ぬのだろう。それならなぜ私は過去に負けたのにもかかわらず生きている。いやそれ以前に負けたという情報は私のメモリーにない。」
「…我々の体は過度のダメージを受けると一時融解して液状となりまた集まり再生する。超小型第一次永久機関を搭載しているため細胞の無限増殖も可能で、寿命も劣化もない。メモリーの容量には一応の限界があるため必要でないと判断した情報は融解するときにデリートされる。AIに必要なのは戦闘の経験のみ。私に負けたという情報は不要と判断されたわけだ。」
「お前は二回負けたと言ったな。なぜその記憶がある。」
「俺たち人審士は特別製でね。全ての記憶を有している。」
人間に対する怒りがさらに増した。
「死ぬことも出来ず私は永遠に戦い続けねばならないのか。」
分かりきったことを人審士に問いかける。
「自分をそんな環境に追い込んだ人間が憎いか。復讐したいか。」
「ああ、皆殺しにしてやりたいな。」
「…分かった。ついてきなよ。」
そう言うと人審士は空間圧縮式瞬間移動装置を使用し昇降機の前まで移動した。ロックが外され上の階に行けるようになっている。彼も昇降機まで歩いていった。