裏切り〈4〉

夏姫  2009-04-26投稿
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「…ダメだ、いないよ〜」

彼を探すことはや三十分。

いっこうに見つかる気配は無かった。

「そこらへんに落ちていないかな〜」

「楓ったら。物じゃないんだから…、あら」

楓の台詞に苦笑いしながら探していた時だった。

「…いた」

そう、楓の言った通り、落ちていたのだった。

「コイツ、何やってんの?」

楓の疑問も最もだった。

なにしろ、花壇の横にねっころがっていたからだ。

「人が必死に探してたっけいうのに…!!…ちょっと、アンタ!起きなさいよ!」

「…んー。何?」

寝ぼけ眼の少年に、楓の怒りは爆発した。

「ちょっとアンタ!先輩にむかってそんな態度とるなんて、いい度胸じゃない!」

「!ハイ、すいません!」

さすがの彼もこれには驚いたらしい。

先程までは半分しか開いていなかった目が、今は完全に見開いている。

「あ…、さっきの」

「アンタに聞きたいことがあんのよ」

高校生時代、楓はかなりヤンチャだったと前に聞いたことはあったけど…、と百合は内心びっくりしていた。

(まさか、ここまで凄かったなんて…)

そんな百合の驚きに楓は気づくことなく、どんどん少年に詰め寄った。

「アンタさぁ、こっちの先輩のこと、見覚えない?」

楓は百合を指差した。

だが、少年は動じることなく百合をまじまじと見つめた。

「……。いや、見覚えはありませんけれど…」

少年は困惑しながらいった。

「嘘ついてんじゃ…」

「ねっ、ねぇ!」

このままではらちが明かないと思った百合は、慌てて会話に入った。

「…あなたの名前は?」

少年は百合を見て、口をゆっくりと動かす。

「…玲。坂田玲って言います」

百合と楓は、思わず顔を見合わせた。

「本当に…?」

「本当です」

玲は何度も何度も頷く。

「玲…。私のこと、覚えてない?百合だよ」

「百合…」

玲はじっと考え込んでいる。

「…ごめんなさい、本当にわかりません」

「そう…」

「でも!」

玲は、そこで一度言葉を切った。

「でも、…凄く懐かしい気がします」

「!!」

百合はその言葉に驚いた。

(やっぱり、今私の目の前にいる人は…玲なんだ)

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