12月23日 正午
この2週間位の間、昇太はご飯を食べさせて貰っていなかった。街ではクリスマスに浮かれ楽しそうな家族連れも多く見られるが、昇太は2学期が始まった頃の面影はなく、かなり体力も落ち、風邪をひいて激しく咳もしていた。
美里は出かける支度をしながら、咳をする昇太に、「うるさい!!」の言葉を浴びせた。
「お母さん、お腹空いたよ、寒いよ」
弱々しい昇太の声は美里の耳には聞こえず、鏡の前でメイクをしはじめた。
少し間を置いて、昇太は、よろよろと立ち美里の腕を軽く揺すった。
その瞬間、メイクがズレた。
「もう!何するのよ!!」
と美里はずるずると昇太を風呂場に引きずっていき、空腹と風邪で衰弱している昇太に冷たいシャワーを浴びせた。
「お母さん、やめて…冷たい…よ…、寒い…よ」
美里は、その言葉を無視し、更に水を強めて浴びせ続けた。
40分程経って、昇太は冷たいシャワーから解放された。
ようやく風呂場からよろよろと這って出てきた昇太は「お母さん…」と口の中でつぶやいたが、声にはならず、既に誰もいなくなった部屋の薄い布団の中にガタガタ震えながら、潜った。
唇は紫色になり、顔面は生気もなく、蒼白。
咳の合間に、
「お…母さ…ん、お…母さ…ん」と昇太はいない母親を求めた。
そしてその声と咳は、
次第に弱々しくなり、
…そして、止んだ。