やりとりを見ていた女は、複雑な思いでいた。
なんで、この荒木とゆう人は、恋愛に貪欲ではないのだろうか?
何度か思いを寄せられているようだが関心をあまりしめさないでいる。
その原因がどうも15年も前に連絡が途絶えてしまった女性にあるらしい。
そこまで、引きずってなんになるんだろうか?と…
(女)「あの、ちょっと聞きたいんですけど」
(男)「はい?」
(女)「男の人って、わりと過去の恋愛にこだわるものなんですかね?」
(男)「どうですかねえ?でも、その人に対する思いが、強ければ強いほど、そうなるかもしれませんね」
…そんなものか?
そういえば、自分はどうだったのだろう?
さまよっている間に、そんなことさえ、そんな思いさえ、わからなくなっていたかも…
(女)「あの…あなたは、どうなんですか?」
(男)「…」
(女)「あっ!聞かない方が良かったですか?」
(男)「いえ。まあ、僕もそうかもしれませんね。」
(女)「会いたいですか?それとも、引きずったままでいますか?」
ここまで質問して、女は我に帰った。
さっきから、自分が感じた疑問点を、聞いてばかりいるし、相手の思いとか全然考えていなかったことに…
(女)「すみません。言いたくないこともありますよね。私どうかしてましたよね?本当にごめんなさい」
女は、少し自己嫌悪になり、下を向いた。
(男)「いえ、気にしなくていいですよ。僕だって、もっとこうしてれば良かったと思うし、引きずってしまうほどの存在の女性はいましたよ。今でも会いたいと思うし…」
(女)「そうですか。私もそんなことあったのかなあ。なんかうらやましい」
(男)「うらやましい?」
(女)「そんな、思いを、思い出せることが…私どうしたら…」
表情をさらに曇らせる女を気遣って、男は少し笑顔で言った。
「きっと、嶋野さんの答えが、何か導き出してくれるんじゃないかな?」
(女)「導く?」
(男)「ええ。彼の答えを聞いてみましょう?
(女)「…はい」
そして、再び、2人は勇一と嶋野とのやりとりの方を向いた。