少年はパンを盗んだ。
無論、生きるために。
…ただ、…ただ走る。
…もう少年には、この行為に対して、何も感じなくなってしまっていた。
もうとっくに考え事などしなくなったのだ。生きるためになら何でもする。
この世が自分を嫌っていることも分かっている。
…少年はただ走った。
少年はある行列を見つける。行列に並んでいる人達は、男や女、子供まで皆々不安や悲しみの顔色を浮かばせていた。
行列の先頭を見ると、ここらでは有名な金持ち家の玄関へ、続いている。
「人売り」だ。別に此処では珍しい事でも無い。金に困った者達が自分の家族、友人、知り合いを売り、色々な者から金をつくるのだ。
いつもの光景だと、少年は思った。そう…、いつもの光景…。人が売られていくのに、なにも抵抗の気持ちが湧いてこなかった。
たた呆然とこの光景を見続ける…。
ふと列に気になる色が見えた。この町には珍しい、金髪の、少年と同じぐらいの少女だ。顔はとても整った顔立ちで、明らかにみすぼらしい人々からはすごく浮いている。
…少年は一目で恋をした。