「おい、クリス。そんなに中身が知りたいのかよ」
ユアンは苦笑いを浮かべながら、隣の親友を見る。
「だってさ、気になるじゃん。もしも国家機密のシロモノだったら、王様に感謝されて、一生王宮暮らしとか!夢が膨らむよな〜」
一人で妄想を展開するクリスを横目に、ユアンは今日で何度目かになるため息をついた。
「それで、…いかが致しましょうか」
「とりあえず開いてみるか。…いいんだな?クリスのいうような物であれば、巻き込まれる可能性は高いぞ。近隣諸国は、喉から手が出るほど欲しがるだろうから」
村長の言葉に、二人は無言で同意を示した。
「…分かった。では、見てみようか」
そう言った途端、クリスの眼が輝くのをユアンは見た。
「……。これは…!!」
「何だよ!もったいぷってないで早く教えろよ!」
「クリス!!」
ユアンは慌ててクリスを止めた。
しかし、村長は二人のやりとりすら聞いていない様子だった。
「お前達…。大変な物を拾ってきたようだな」
村長は驚きと恐怖の混ざった表情を浮かべた。
「…どういうことです?」
ユアンは慎重に尋ねた。
「これはな、最早国家機密とかいうレベルのものではない。この世に住んでいる全生命の未来がかかっているものだ」
クリスは両目を大きく見開いた。
「…何が書かれているんです」
ユアンがそう尋ねると、村長は緊張の面持ちで続けた。
「これは、極秘文章だ。しかも、魔法がかかっている」
「魔法…」
二人は続きを待った。
「簡単に教えるとしよう。 この中には、こうあった。
『…月が満ちる夜、人々の想いを糧とし、暗黒の王が蘇る。危機救いたくば、汝汚れなき魂のもと、平和を願うべし。さもなくば、世の破滅を見るであろう』
…わしらは、見てしまった以上、無関係ではおれぬ。この文章を一刻も早くお届けするのだ」
室内は静寂に包まれた。