セピアカラー(48)

優風  2009-04-27投稿
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・畑中さんの言葉で周りの空気が一瞬、張りつめ凍えた感じさえ覚えた。畑中さんは僕から目を離しグラスの中のビールを眺めていた。そして、

「実は舞ちゃんも含めて舞ちゃんの兄貴ともう一人の友達であの場所に俺達もいたんだ」

そう言うとまた畑中さんは僕に目を向けた。僕はなんて言ったらいいのか分からず言葉を失い絶句した状態に陥っていた。グラスの中に残ってたビールを口にしてから畑中さんは続けた。
「最初に俺が気づいてこれはやばいなって思ってさ。場所を移動しよう言いかけた時にはもう遅かった。舞ちゃんも目撃してさ。一瞬にして顔色が変わって花火どころじゃないって風だったよ。帰りの車の中では別に愚痴をこぼしたりする事はなかったけど目に涙を浮かべ不安な面持ちでずっと窓の外を眺めていたよ」

自分のグラスにビールを注ぎながら言葉を選ぶようにして畑中さんは言った。

「じゃ、舞は気づいていて僕には黙って知らないふりをしてたって事ですか?」
「この間、三人で飯食っただろ。あの時も君が来る前は落ち込んでて元気のない様子だったよ。とりあえず君が来たらいつものようにしてたけどさ」

“まぁ、飲みなよ”と少なくなっていた僕のグラスにビールを注いだ。しかし、僕はグラスを手にする事はなく太ももの上でぎゅっと力を込めて拳を握りしめていた。アルコールが入った事から顔を赤らめてた畑中さんをチラッと見て、それからまたビールがつがれたグラスに目を向け、

「…舞は強いですね。僕が年上って事もあったせいだろうけど甘えてくる事が多い事もあってまだ子供だなって思ってばかりいました」
そう言い終えると僕はグラスにつがれたビールを一気に喉へ流し込んだ。喉が熱く焼けるような感じを覚えた。

「舞ちゃんも近いうちにこうなる事を予想してたんじゃないかな。真剣に考えるのはいいけど深刻になったらダメだとは言ったんだけどね」

そう言うと“そろそろ出ようか”と言うと畑中さんは席を立ち“ごあいそう”と言ってレジに向かった。僕も後に続き財布を取りだそうとすると“ここは俺が払うよ”と言って畑中さんが全額支払い会計を済ませ、店を出た。

・店の中にいたせいだろう。外に出ると寒さが身体中を縛りつけた。

「もう一件行こう」

そう言って畑中さんは僕の意見も聞かず次の店へと歩き始めた。

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