セピアカラー(49)

優風  2009-04-27投稿
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・街中を歩きながら畑中さんは話しを続けた。

「舞ちゃんはさ、以前の彼氏にも浮気された事があって別れたらしいんだ。専門学校の同級生でさ。二回目までは許したみたいなんだけど三回目の浮気は舞ちゃんの友達と浮気したみたいなんだ。それでその彼氏には愛想が尽きて自分からピリオドを打ったらしいんだ」
「そうなんですか?僕が聞いた話しだと彼氏が地元に帰る事で遠距離になるから別れたって聞いてたんですけど」
「見栄を張ったんだよ。浮気されて別れたなんて格好つかないからそう言ったんだよ」
「僕も単純だから舞の言った言葉を真に受けて信じきってました」
「嘘も方便っていうけどあの娘は人を騙して陥れるような嘘は決してつかないよ」

真摯な眼差しを僕に向けて静かな口調で言った。

・ドアの横に“B・B・"と記されたネオンの看板が掲げられたバーの前で“ここなんだ"と言って立ち止まり畑中さんはゆっくりドアを開いた。

「いらっしゃいませ」

年輩のマスターらしき人物がダスターでグラスを拭きながら僕達の方に顔を向けた。ゆったりした音楽が流れ、青いネオンの光が落ち着いた雰囲気を漂わせていた。畑中さんはカウンター席に座り、
「マスターいつもの」
「かしこまりました。そちらのお客様はいかがいたしましょう?」
「僕はカルーア・ミルクを」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」

そう言ってからマスターは僕達が注文したカクテルを作り出した。生憎、僕達以外には客の姿はなかった。
・畑中さんはタバコに火をつけて深く吸い込んでから白い煙りを吐き、

「その彼女とはいつから?」
と問うてきた。

「三月の後半です。正確に言うとあの花火を見た後、僕から言って付き合う事になりました。彼女は僕が通っていた小学校の後輩なんです。実は小六の時に僕は彼女に恋心を抱いてました。それから昨年の九月に汽車の中で彼女を見かけたんです」
僕がそこまで話すと畑中さんの前に出来上がったカクテルが差し出された。畑中さんの頼んだカクテルはドライマティーニだった。

「その時は声を掛けず彼女は僕より先に汽車を降りて行きました。こう言うとストーカーだと思われるかもしれませんが今年の二月に彼女が降りた駅で降りてみたんです。もしかしたら偶然出会えるかもしれないと考えて」

そう言った後、僕の前にカルーア・ミルクが差し出された。

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