・タバコを消し、ドライマティーニを口にした後、
「それで彼女の姿を探したら見つけれたんだ」
「はい、今しかないと思って声を掛けて少し世間話しをした後に連絡先を交換したんです」
そこまで話してから僕もカルーア・ミルクを口にした。濃い甘さが口の中、一杯に広がった。
「一度会うのは偶然で二度会うのは必然って言うんだよ。きっと神様が君達、二人を引き合わせたのかもしれないな」
「畑中さんから舞を紹介されてから本気で好きになって付き合いました。舞の笑った顔がとても好きでした。これには嘘も偽りもありません」
僕の話しに耳を傾けてた畑中さんはドライマティーニを飲み干してから今度はモスコミュールを頼んだ。
「分かってるよ」
「この間、舞の部屋に置いてあった僕の荷物と一緒に手紙が添えられて送られてきました。手紙を読んでこんな不甲斐ない自分を本気で好きでいてくれたんだなと改めて思うと涙を流しました」
「涙が出るって事は君が舞ちゃんを本気で好きだったって証拠だよ。人間、大切なモノを失うと自然と涙を流すもんさ」
「そうですね」
僕はタバコに火をつけた。畑中さんも同じようにタバコに火をつけた。
「昨日、飯食ってからさ。俺の車でドライブしたんだよ。どこか行きたい場所はないかって聞くとあの花火を見た海岸に行きたいって言ったから二人であの海岸へ行ったんだ。知ってるか?ネットや雑誌にも公表されてるんだけどあそこ、通称“恋人岬”って言われててさ。カップルで行くと必ず結ばれるってジンクスがあるらしいんだ」
「知ってます。僕も偶然、雑誌に掲載されてるのを見てから行きましたから」
「そっか…。俺、昨日舞ちゃんと寝たよ」
「えっ!?」
「別れた君が文句を言う権利はないよな」
畑中さんの言うとうり舞と別れた僕に文句を言う権利はなく返す言葉が見つからずカウンターを見つめていた。
「失恋した時の女ってどうして親身になって優しくしたらあぁも簡単に股を開くんだろうね。舞ちゃん、小柄な割には胸も結構あってさ、エッチな身体してるよな。それからやってる時は普段より一段と妖艶が増してさ…」
畑中さんがそこまで言った時、僕は反射的に畑中さんの顔面を殴った。いすから倒れ尻餅をついた姿勢で上目遣いで僕を見てきた。口からは血が流れていた。
「あんたは最低だ」
そう言ってカウンターにお金を置いて踵を返し速足でその場を立ち去った。