孤(こ) 五

彰子  2009-04-27投稿
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「…母さ…ん、…お…母…さん…」
 美里はかすかな声で目が覚めた。
 また汗びっしょりだ…。 誰もいるはずはなく、殺風景な刑務所の独房の部屋の隅で縮こまって座っている。
 ここに来てから起きているのか寝ているのかも、自分で判断が難しい時がある。
 「…昇…太…  …?」美里は、声にならない程のか細い声で、空間に向かって、つぶやいていた。
 昇太の夢をよく見る…
自分ではした事のない、公園で楽しそうに手を振りながら走りまわる昇太、ご飯を沢山お話ししながら美味しそうに食べている昇太。いつも幸せそうにしているのだか、夢は必ず途中で終わる。
 途中で昇太の姿が見当たらなくなり、必死で汗だくになりながら探すが、どこにもいない夢…
 昇太と一緒だった頃、自分は一体彼に何をしていたのか…

 19の頃、自分を好きだと言う男と同棲を始め、腹に子が出来たと判った途端、男は部屋を出て行き、美里は自棄になり、街で遊ぶようになった。腹が目立つようになり、それも出来なくなり、苛立ちを覚えたが、昇太が生まれ、可愛く思った…が、だんだん男に似てくるようになった昇太を避けるように生活していた。 意味もなく、無性に苛立ちしかなく、街で遊び、酒を飲み、男を試すかのように、手当たり次第変えた。
 何もかもどうでもよかった…



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