ボックルが言う。
「ワシらの命令は絶対じゃ。どんな理由があっても拒否する事は出来ん」
「拒否出来ないとなれば、エルファは逆ギレして子供たちを1体残らず…
殺してしまう可能性も否定出来ません」
唖然とするボックル。
「そんな事、ないじゃろう?」
「エルファなら、やりかねません。子供1体を踏み殺しておいて、平気な顔をしてますからね」
「じゃあ、どうする?
もうしばらく、様子でも見るか?」
「そうですネェ…」
どうやら今後、この線でエルファとの対処法を進める事になりそうだ。
この時だ。
「ジャックぅ〜」
誰かがジャックの背中に抱き付いて来た。
振り返ってみると、エルファと同じ背丈の女性の人形の姿があった。
栗色の長い髪に小さめな顔、やや細眼の…
ちょっと、不良っぽい感じのギャル系だ。
「なあーんだ、ルーシーじゃあねえか」
笑顔になるジャック。
人形協会で働く人形ルーシー。
スザンヌの所属する人形生活課の1人である。
「久しぶりねジャック! 元気だったァ!?」
ルーシーはジャックの前に回って膝に飛び乗り、抱き付く。
「こらルーシー! 今は大事な話し合いをしてるのよ、あっちへ行ってなさい!」と、スザンヌが注意するが…
「イイじゃなーい!
久しぶりにジャックに会えたんだからァ!」
人間の友達であるジャックの顔が見れて、ルーシーは上機嫌なのだ。
「しょうがないわネェ」
「仲がイイわい」
スザンヌもボックルも、厳しくは注意しない。
ジャックはルーシーにとっては、命の恩人。
よき理解者なのだ。
こうやってハシャぐルーシーも、任務の時は別人のように行動する。
「ルーシー、久しぶり」
「マルシア様も」
マルシアの頬にキスするルーシー。