駐車場に来て遼一は言った。「二人とも運転は?」
「ワタシは出来ます。時々運転します」美穂は答えた。
「アタシは、一応免許はあるけど、ペーパードライバー」桃子が答える。
アタシに運転させる気?冗談じゃないわ…。誰だと思ってるの!桃子は心の中で言った。
「じゃあ、カンちゃんは助手席に、吉原さんは後部座席でいいかな」
「あ、ハイ。分かりました!」やったぁ遼一さんの隣だぁ!美穂は心の中でガッツポーズをとる。
桃子が遼一の車を見て立ち止まる。「車って、コレですか?」
「うん。そうだよ。チャイルドシートは、外してあるから…」二人の荷物をトランクに積めながら遼一が言った。
ちょっと待って…。こんな車でレースに出るつもりなの?桃子は遼一を見た。
遼一は、さっさと運転席に乗り込んだ。美穂は、嬉しそうにナビシートに座る。
桃子は、仕方なく白いトヨタのイストの後部座席に乗った。
てっきりスポーツカーだと思っていたのに、こんな普通の車で勝てると思ってるの!?
「あ、吉原さん、悪いけど禁煙車だからタバコは遠慮してね。シートベルトも忘れずに」遼一は振り返って桃子を見て言った。
ますます桃子は腹が立ってきた。ベルトを締める。外観と違い、意外と車内は広かった。乗り心地も良い。キビキビ走る感じだ。少しは機嫌を取り戻した桃子だった。
「スポーツカーだと思ってました。普通の車ですね」桃子は遼一に向かって言った。
「普通の車だから、いいんだよ」遼一が言った。
「何でぇ?」
「目立たないから」
美穂は、遼一を見る。遼一さんの横顔がこんなに近くに!
美穂は大人しかったが、心の中では、鼻血が出るほど興奮していた。