蒼凪さんは、若干の苦笑を浮かべて、立ち上がった7人を見た。
「く、くそっ。なんだこいつ。お前等、パターンDで行くぞ。」
リーダー格は、声を荒げて叫んだ。
どうやらパターンDは、時間差攻撃タイプらしい。
散らばって、バラバラに攻める。
意外と広い休憩室なので、時間差が映えるらしい。
蒼凪さんは苦笑を消さずに動く。
今度も僕みたいな普通の人には見えない早業で、
「ここで戦ってもいいんだけど」
バキッ、と一人。
「流石にこの」
ボグッ、と一人。
「休憩室ってのは」
ズガン、と一人。
「どうかと思うんで」
ドゴッ、ビタン、と二人。「移動しません?」
ブゴフ、と一人。
「じゃあ、決着はそこで。」ヒュン、ズタン、とリーダー格を。
合計七人倒し。
蒼凪さんは、休憩室を見回した。
何か発見したらしく、僕を拉致って、走る。
ああ、僕って何もしてないなぁ・・・。
蒼凪さんは、休憩室のソファーを片手で投げた。
男たちにではなく。
窓に。
ガシャーン、と。
音を鳴らし。
ソファーは落ちていく。
「そんじゃあ、また後で。赤いバイクが目印でーす」蒼凪さんは、とんでもなく軽い感じで、別れの挨拶を済まして、窓から飛び降りた。
いや、僕もろとも死ぬんスけど・・・。
と思ったけど、そこは蒼凪さん。
落ちていくソファーに一旦着地して、膝をクッションに、普通に着地する。
「さぁ、楽しい楽しい追跡劇の始まりだ。」
蒼凪さんは、心底楽しそうにそう言って、笑った。
それにつられて僕も笑う。但し、思いっきり苦笑。