「 ギヤーッ !!」
美里は喉が千切れんばかりの声で叫んでいた。
と、赤いそれは、こっちに向かって両手を伸ばし、美里の頭から、引っぱり出そうとしている。
その感触と言えば何にも例えられない程で、何とも言えない異臭が鼻をつく。
生ぬるく、ヌメヌメしたそれは、驚く程の力強さで引っぱっている。
夢なら早く覚めて欲しいと願いながら、美里は耐えていた。
遂に引きづり出されたと思った瞬間…
美里は薄暗い長い廊下に立っていた…
…ここはどこなのか… そう思いながら壁を見ると、鍵がかかった病室の外にいた。
…自分の名前…
何が何だか解らないが、とにかく閉鎖の中の恐怖からの解放感で無我夢中に長い廊下を走り出した。 一心不乱にとにかく逃げなければ…
出口は…? 誰かいる?何でもいい…助けて欲しい… 逃れたい … ただただ… それだけ
廊下は曲がりくねり、どこがどこなのか解らない…心に少しでも落ち着きを求めるが、無駄だった。
汗は吹き出し、酸素を吸ってるのかどうかも難しい程、息切れしている。
…ずいぶん、走った…
追われている恐怖感はあったが、走るのをゆるめ、ふと、電気が付いている部屋を見つけた。
…沢崎 美里…とある
〔 私 の 病室 …〕そう、必死で走った距離をあざ笑うかの様に、逃れたはずの空間は目の前にあった。