目の前の病室のドアが振動でガタガタ鳴り、今にも壁ごと飛んで来そうだ。 美里はまた必死で走り出した。今度は確実に追われている…
‘ビチャッ ビチャッ’と、ゆっくり確実に… でも、凄い速さを感じる…
時折振り向きながら走る美里は、さっきとは逆の方へ曲がった
と、階段がある
声が息と共に洩れている…出来るだけ洩れない様に、手で抑えながら走っているが、恐怖と孤独と息切れとで、どうしても洩れてしまう…
…階段を降りれば、出口 があるはず…
そう自分に言い聞かせ、力を振り絞り降りていく。
降りても降りても、階段は無くならない…
少しずつ赤いそれは、近づいてくる…
汗だくで力も限界に近づいて来た時、階段の脇に職員用のエレベーターを見つけた。
階段の脇の影に息をひそめ、赤いそれが通りすぎるのを待った…
〔あれに乗れば下に着く〕美里は慌ただしくボタンを押し、エレベーターに飛び乗った。