『……………は?』
わからない。
なんて言ったんだろ?
『ごめん、よく聞こえなかっ…』
『あした死んじゃうの。』
『…誰が?』
『あたしが。』
『なんで?』
泣いてるように笑う。
やだよ。
そんな笑顔。
『ほんとは昨日だったんだよ。』
『……………。』
『でも、延びたの。』
『……………。』
し、死ぬって………何言ってんのかわかんないよ。
『…ブン?』
『病気なの?』
おそるおそる聞いたら、ユキは笑った。
『ちがうよ。』
『じゃぁなんで!』
笑い話じゃないだろ!
『…………ずっとずっとずっと好きだったひとがいるの。』
『え…………』
好きなひといたんだ。
『でもね、明日結婚しちゃうんだって。』
『…………うん。』
ごめん。僕いまホッとした。
『あたしずっと好きだった。』
『うん。』
『彼もあたしのこと好きだった。』
『うん。』
ホッとしたけど、なんかつらかった。
『でもね、大人には何かを犠牲にしなきゃいけない時が来るんだって。』
笑ってうつむく。
泣きそうな声だ。
『いっぱい泣いたよ。』
『うん。』
『でもダメだったの。』
『うん。』
『だから、もういいやって。』
何がいいんだか。
『名前言うのためらったのはね、好きだったひとがあたしの名前好きって言ってくれたから。』
『うん。』
僕も好きだ。
『名前言ったら、泣いちゃうと思って。』
『うん。』
でも教えてくれた。
『だけど、ブンには教えてみたの。』
『うん。』
別に深い意味はないんだけどね。
とユキは笑った。
『あした、結婚式なんだって。』
『うん。』
『…………やだなぁ。』
ユキはチラッと涙をみせた。
『………でも、きっとあたし死ねない。』
なんで?
『ほんとはね、ブンと初めて会った日も死のうとおもってたんだよ。』