『初めて会った日も死のうとおもってたんだよ。』
『うん。』
『だけど、ブンがあしたも来てくれるっていうから、やめたの。』
『うん。』
ユキはずっと喋ってる。
『だけど、ブン毎日遅刻するんだもん。』
『うん。』
『明日は来ないだろうなって思ってたのに。』
ユキの声がふるえだす。
『ブンが遅刻しなければ、あたし死ねたのに。』
『うん。』
ごめんね。と言うべきなのだろうか。
僕は迷った。
『ブン、あした遅刻しないでね。』
ユキが泣きながらいう。
そんなに好きだったひとが結婚してしまうなんて。
そりゃ死にたくもなるさ。
『ユキは死にたいの?』
初めて名前をよんだ。
こんな質問で使うなんて。
『………わかんない。』
ユキは疲れきった声で呟く。
『あしたがこなければいいのにね。』
そう呟いて、また涙をチラッとみせた。
僕はいま
何をすればいいんだろう。
今日は昨日になって
明日は今日になって
『……………明日は今日になるんだよ。』
『…………え?』
ユキが顔をあげる。
『どんなにつらくても、嫌でも、明日はくるよ。』
『………わかってるよ。』
『でも、明日は今日になるんだよ。』
『………?』
『それで、今日が昨日になるんだ。』
『ブン。あたしわかんない。』
ユキは笑ってる。
『明日なんか来ないよ。』
僕が言ったらユキはキョトンとした顔をこちらに向けた。
『明日も昨日も、みんな今日になるから。』
『…………ブン?』
『おれ明日なんていらないから。』
『ブン泣かないで?』
泣いてない。涙が勝手に出てくるだけだ。
『明日も今日にするよ。』
『………結婚式は明日なんだよ。』
僕はにこりと笑ってみせた。
『明日はいつだってやってくる。』
屁理屈かもしれない。