『あしたなんてこれからいっぱいくるよ。』
彼女は全然わからないって顔をしている。
僕もわからない。
でも
『僕はあしたも遅刻する。』
そのあしたもそのまたあしたも。
『今日にするよ。あしたも今日にする。』
何言ってるんだろう。
日本語がなってない。
ユキは、わらっている。
笑うなよ!
叫ぼうとしたときだった。
『あいだふみやーーーーーーーッッッ!!!!!!』
担任の怒鳴り声がした。
気が付くと空はうっすら夕焼け色に染まっていて
グランドからは野球部の掛け声が聞こえる。
『…………また、お呼びだし?』
『みたいだね。』
今ここを離れたら、ユキは死んでしまうかも。
『はやくいかなきゃ。』
ユキが急かす。
僕はなにも言わずに立ち上がって、屋上のドアを開けた。
階段を降りようとしたら
人影が後ろにある。
『…ユキ?』
ユキは、昨日と同じように、泣きそうになりながら
でも笑って
『明日も来るの?』
と尋ねた。
僕は考えるふりをして、ゆっくり振り返って
『うん。来る。』
と答えた。
ユキは、クスクス笑って、先生に怒られちゃうよ。なんて言う。
僕は苦笑いをしてから階段を降りた。
そして僕からユキが見えなくなったところで、言った。
『俺もユキって名前好き。』
そのあとは、とにかく急いでしょくいんしつに行った。
顔が熱い。
ガラガラッッッと勢いよくドアを開ける。
先生!明日も遅刻です!
その日の担任の怒鳴り声は
300m先の駐輪所まで聞こえたらしい。