航宙機動部隊前史後編・45

まっかつ改  2009-05-02投稿
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最終兵器は無力化出来たとは言え、かつての超大国及び最終聖戦思想派の残党達は、まだまだ油断ならない勢力を保っていた。
彼等は辺境に策源地を設け、密かに軍備を整え、中央域侵攻の期を虎視眈々と伺っていた。
やがてこの反動に航宙遊牧民族の一部と追放された宗教界過激派・異端の科学技術者達のほとんどが加わり連合し、勢力はより強大となっていた。
そして銀河元号一六三0年第一期二日(修正太陽暦一月二日)・三人の大元帥に率いられた超大国残党軍は満を持して挙兵した。
第五次恒星間大戦―別名三皇帝の乱の火蓋が切られたのだ。

選局は当初、三皇帝の側に有利に進んだ。
失職を恐れる百戦錬磨の軍人を多く抱え、航宙遊牧民族や異端科学の協力やテクノロジーを利用出来た彼等の実力は、かつてのギャームリーグの姿を彷彿とさせる物があった。
対する人類総会陣営は、中央域と言う経済・文化の要衝を押さえ、物量面では圧倒していたが、自ら最終兵器・異端科学・絶対権力をタブー化したと言う制約・弱味があり、戦争遂行上効率の悪さには始終泣き続けなければならなかった。

各所の戦場で、常に大兵を揃えた筈の人類総会義勇軍が少数精鋭の三皇帝艦隊に翻弄される―そんな場面が相次いだ。
だが勿論、何時までも負けに甘んずるつもりも戦いを長引かせるつもりも人類総会には無かった。
彼等は三皇帝勢力のひそみに倣って航宙狩猟民族を味方に付けて、その協力を仰いだ。
航宙狩猟民族の持てる高度かつ多彩な技術力を吸収しようとしたのである。
遥か昔、人質に取られた子弟達を救う為とは言え、航宙遊牧民族を裏切った時から付きまとう悪いイメージと不当な偏見に苦しんだ上、近年の大戦期では宙邦や超大国に散々人材や技術を搾取され続けて来た彼等は、最終平和思想を掲げ、地位と名誉の回復と向上を約束する人類総会を熱狂的に支持し、手を貸すのを惜しまなかった。

航宙狩猟民族の参加によって、艦艇や兵器の刷新に成功した人類総会義勇軍は、三皇帝機動部隊と五分の戦いを演じる迄に勢力を盛り返した。
こうなると、回復力や再生産力に乏しい三皇帝側は、次第にじり貧になり始める。
そして星間軌道の実用化が始まると、それを独占的に使える人類総会陣営の勝利はほぼ確定し、銀河元号一六三九年、戦争は終結した。



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