その封筒を、見た勇一は、携帯でやりとりする以前、2人が交流する手段であったものの一つだった手紙を思い出していた。
封筒の色は、由美のお気に入りだった黄色だった。
「その封筒…懐かしいです。由美が気に入っていた黄色の封筒です。」
「そうでしたね。
この封筒に手紙を書いて入れる時の由美は幸せな顔をしていました…」
嶋野の言葉に勇一は、こみ上げてくるものがあった。
それだけに、由美の消息を、もっと早く知りたかった。
しかし、空白の長さが、由美の願いとゆうのなら、仕方ないだろう。
「荒木さん」
「はい」
「私は、あと4日間、こちらにいますが、由美が亡くなる前に、あなた宛てに書いた手紙を、3通お渡しします。お読みになって、何か、おっしゃりたいことがありましたら、こちらの携帯に、かけてください」
15年ぶりに、手にした由美からの手紙に、勇一は、頷いた。
「ありがとうございます。ゆっくり読ませてもらいます。
悲しいですけど、読むことで、この空白期間が埋まればと思います」
そう答えた勇一に、嶋野は再び頭を下げた。
「ありがとうございます。私もそう願ってます」
と言うと、嶋野は店を出ていった。
「正、佐野さん、これで満足かい?」
「な、なんだよ、気づいてたのかよ」
「あたりまえだろ。ちらちら、目に入ってたよ。おおかた、デートってのも、違うだろ?」
勇一の指摘に、2人は素直に認めた。
「そうよ。でも、荒木さん、半分は興味本位かもしれないけど、半分は、あなたを心配してるからよ」
「そうだよ。俺も、親友だからこそ、お前の過去を知っておきたかったんだ。
よけいなお世話かもしれないけど…」
2人が悪気じゃないことくらい、勇一はもちろん理解していた。
「ありがとう。2人とも。中村、ごめんな。俺に閉ざされている部分があるとしたら、このことが理由なんだ。」
中村は、反省していた。
勇一の、知らなかった部分とはいえ、心の闇に触れてしまったこと。…そして軽々しく、今まで合コンに付き合ってもらったことや、親友でいてもらっていることを。
「じゃあ、また。お休み」
「ああ…」「お休みなさい」
勇一が、帰ったあと、2人はしばらく、考えこんでいた