翌朝。
「おはよー!!」
私とミサが教室に入るなり、
いろんな所から挨拶が飛び交う。
「おはよ♪」
私は皆に微笑んだ。
「おはよ〜ピース☆」
ミサはまたミサ辞典から
ミサ語を言った。
「井上、はよ」
珍しく、梓姫が片思い中の男子、
松本が声をかけてきた。
「おっ…、おはよ!!」
ミサは私が松本に片思い中だって事、
鈍感だから気づいていない。
…いや、むしろ、
自分以外の事には興味が無いらしいのだ。
「昨日さー、ファミレスでぇ…」
早速、恋バナ仲間に昨日あった出来事を伝えるわ、
盛り上っていた。
私は実はの話、
ミサ以外のクラスメートとは、
大して仲良くなかった。
ただ、クラスで強い位にいる‘ミサの親友’
というだけだった。
「ねえねえ、井上さん」
どこか一点を見つめていると、
いかにも可愛らしい声がした。
「何ー?」
それは、後ろの席にいる三浦さんだった。
「これ、あげる」
あまり話した事がなかったので、
話しただけで、気分が弾んだ。
「手、出して?」
私は手を出す。
「はいっ」
手を広げると、古くて錆の付いた、
小さな時計があった。
「三浦さん、これ何?」
しかし、顔を上げると
そこに三浦さんはいなかった。