二発の乾いた音が響く。銃弾はマーカスの足元に二発。
「ひぃぃぃ〜!!」
マーカスは驚き、グレイに向かって走った。
「たっ‥助けてくれ!あんた警察だろ!」
錯乱状態のマーカスは、グレイの腕にしがみついた。
「放せ!!」
憂牙は、その状況を狙っていたかのように、微笑を浮かべ、すぐ横にあるナイトテーブル上のマリア象を手にした。
「マリア象は頂いていく」
「・・・!」
次の瞬間、憂牙は、ベッドの上にかけられてあるベッドフットスローに手を伸ばし、頭からかぶった。そして、後ろの窓に向け、数発、発砲した。
ガシャーン!!
窓ガラスの割れる音と同時に、気圧の変化による風圧が、部屋全体に流れ込む。
「うっ‥!」
「ひぃぃ‥!!」
割れた窓ガラスの破片が、細かい凶器となって、グレイとマーカスに向かって襲い掛かる。
視界を奪われたグレイの横を風が通り過ぎる。
「ゆっ‥憂牙!」
マーカスを振り切り、グレイは憂牙の後を追った。
スイートルームの出口、内開きの扉の前には、ボディーガードが一人横たわっていた。
「・・チッ!」
横たわるボディーガードを足でどかし、扉を開け、エレベーターホールへ向かった。
最上階専用の一つしかないエレベーターの扉が閉まりかける。向かってくるグレイに憂牙は言った。
「ボディーガードを始末してくれて感謝するよ、グレイ」
「憂牙!!」
吸い込まれるような赤い瞳。憂牙の微笑む顔がエレベーターの扉によりさえぎられた。
グレイは、閉まりきった扉に向かい両手を強く叩き付け、うなだれた。
グレイの両腕は、ガラスで出来た無数の擦り傷により赤い血が流れていた。
つづく