「ほう…ちなみにどんなの読んだんだ?」
「題名は忘れてしまいましたがこういうシーンがありました」
そう言って奏は人差し指を立て口許に近付けた。
「禁則事項です」
「何読まされてんだお前!」
今俺は、非常にこの町の将来が不安になったぞ!てか、仕事中に何持ってきてんですか御巡りさんっ!
「傘が二つありますけど、こっちは私のですか?」
奏が二本の内の一本を凝視しながら聞いてきた。
「ん、ああ。まあ、一応な。でも、あんま意味無くなっちまったけどな…」
空を仰ぎ見ながら俺は呟いた。
「…」
パシッと奏は無言で俺から傘を奪い取った。
「?おい、何だよ」
「…丁度日傘が欲しいと願って居たところだったので丁度良いです」
バッと傘を広げ差しながら奏は言った。
「だけど、それ日傘じゃないぜ?」
「気の持ちようで物は何にでも見えます…」
そう言って銀色の芯を両手で挟みクルクルと回した。
「そう…、例えばよく泡立ったお茶をビールと呼ぶように…」
「呼ばねぇよ」
そんな、シロップとジュースは同じだ、みたいな理論を展開するな。