「石川遼一。こちらは、チームメイトのカンノ ミホさん。改めてよろしく」
「か、神野美穂です。神棚の神に野原の野、美術の美と稲穂の穂デス…よ、よろしくお願いします」アガリ症の美穂は、ガチガチに緊張して言った。
「カンちゃん、突然で悪いけど、俺の独断で彼のチームと共同戦線を張る事にした。君達を無事にゴールさせるのに必要と思ったから。彼と組めば、その確率は飛躍的にアップする」
「わ、ワタシは、もう遼一さんに全ておまかせですわよ」展開についていけず、美穂は舞い上がって言った。
「こちらこそよろしく。石川さんは、どんな字ですか?オレは信用の信に漢数字の二です」シンジが柔和な笑みを浮かべて言った。
「あぁ、遼一でいいよ…字は…」遼一がぼんやりと言った。美穂は遼一の様子の変化に気が付いていた。遼一さん、きっとスゴく難しい事かずっと先の事を考えている…。
「石塚さん…遼一さんって、ゴルフ王子と一字違いなんですよ。一本線が多いんです」美穂は遼一の代わりにシンジに説明した。
「ふうん。そうなんだ…。神野さん、オレに敬語は要らないよ。気を使わないでいいからね。シンジでいいよ。色々と面倒だから」
「あっ、あぁ、ワタシなんて、カンちゃんで、いいですわよ」
「だから、気を使わないでいいって…」シンジは笑って言いながら遼一を観察する。何を考えているのだろうか。
「家族で参加してるのかい?」遼一が突然シンジに言った。
「ええ。そうです。やはり貴方はすごい…」
「えっ、えっ?何で知ってるの?遼一さん」
「知ってる訳じゃないよ。シンジ君、色々と面倒だって言ったから」遼一が答える。もうぼんやりしてない。
美穂はよく分からなかったが、遼一の言う事だから、まぁいいか、と思った。
「後で紹介します。そちらのもう一人もお願いしますね」シンジが言った。
「時間があまり無い。作戦を立てよう。シンジ君、車を停めた場所から、君が考えた作戦と俺の作戦は、多分似たようなもんだろう?どうやって脱け出す?」
「二虎競食の計」シンジはわざと、作戦名だけを言った。遼一を試しているのだ。
「うん…。エサは?」遼一はすぐに聞き返した。
シンジの顔が明るくなる。「遼一さん、アンタ何者?」
「君も古い事知ってるね。しかも頭の回転が、けた違いに速い。少しついていけない」
いやいや…。遼一さん、ワタシは二人の会話についていけません。