『ねぇ、みんなボクも仲間に入れて。』
今日もアイツはやって来た。
ボクたちの仲間に入りたいんだって。
バットもグローブも持っていないクセに。
『純平のヤツしつこいよな。毎日毎日、マジウザイわ。』
『アイツんち、ビンボーなんだろ?!父ちゃん死んで、母ちゃんしかいないから、バットもグローブも買ってもらえないって。』
『なら、野球やりたいって言うのはムリじゃね?!』
『まぁ、でも入れとけッ。ずっと球ひろいさせとけよ。
あと、帰りにカバン持ちさせよーぜ。』
最後に言葉を吐いたヤツ。
コイツの一声で、今日も純平の球ひろいが決定。
あと、カバン持ち。
純平がかわいそうだって思う。
でも、ボクにはどうするコトも出来ない。
ただかわいそうだって思う。
そんな風に思うコトで、自分はちょっとは良いヤツなんだって、
ムリヤリ自分に言い聞かせていた。
ホントはただの偽善者。
ボクはそんな自分が――
ずっと大嫌いだった――
『先生、純平君の隣は、もうイヤです。
クサイんです。
席替えしてください。』
こんなコト言うヤツも、
『こら、田中君。
高木純平君と仲良くしなさい。
どうしても耐えられないなら、マスクをしなさい。』
こんなコト言う先生も、
ボクは大嫌いだった。
もしもボクに勇気があったなら、
きっと純平君と仲良くなれるのに。
もしもボクに――
いつもキレイにボクを磨いてくれる純平君、ありがとう。
キミは、いつかきっと幸せになれる。
そんなの――
その澄んだヒトミを見れば分かるサ――
『純平、ちょっといらっしゃい。
母さんからのプレゼントよ。』
『なに?!お母さんプレゼントって?!』
ほらっ、今ここにまずひとつ――
『グローブだぁ!!
ありがとう!!
お母さん!!』
そう――
イイヤツが幸せにならないでどうするのって話サ。
高木 純平 小学校1年生。
これからもっとデカイヤツになると思うヨ!!
ボクが保証する!!
頑張れヨ!!
泥まみれのボールより☆