「ふぅ・・・。」
咲坂は小さくため息をついた。
「来て早々、これか。」
自分以外誰もいない通路で独り言を言ったあと、咲坂は左腕の鎧のボタンを押し、鎧を口に近付けた。
「ウルフ部隊各員へ、新入りが迷子だ。見つけしだいブリーフィングルームに連れて来い。外見は黒い学生服と、右腕にギプス。以上。」
通信が終わった咲坂はもう一度、小さくため息をついた。
一方、龍一はとゆうと・・・
(思ってたような場所とは違うなぁ・・・)
あてもなく、キョロキョロしながら歩いていた。
(監獄みたいなとこだと思ってたのに。)
『ホーム』の中は、監獄のようなイメージとは程遠く、開放的で気分を落ち着かせるような雰囲気だった。身長の三倍はある高い天井、幅の広い通路、その脇に点々と置かれたラベンダーに似た植物の鉢植え、爽やかな香りがただよってくる・・・
(いい匂いだ・・・なんだか落ち着く・・・)
壁には等間隔でモニターとドアが並んでいた。
ドアの上にはプレートが付いており、それを見ながら龍一は歩いた。
(武器庫・・・開発室・・・医務室・・・食堂・・・)
その他にも様々な部屋が有った。中には、『娯楽室』なんて部屋まで有る。
(本当に・・・こんな所で強くなれんのかなぁ・・・?)
龍一は咲坂と『ホーム』を疑った。