夕暮れの校庭に、やぐらが組まれちょうちんがぶらさがる。
見慣れた場所に魔法がかかる。
たった一夜の夢。
本部在席というのは、本部テントに座っているだけで暇な係。
一応アナウンスなど連絡係で座っている。
「千夏、髪伸びたね」
「ずっとくくってたからね」
夏祭りは、全員浴衣という意外は自由。
だから髪も浴衣に合わせてハーフアップにしてみた。
普段ポニーテールだから理沙ですら髪伸びたなんてことをしみじみ言ってきた。
夕日が沈み、空が夜に色を変える。
夏祭りは本格的になり、校庭に活気づく。
音楽も祭りはやし。
なんだか胸がわくわくしてきた。
「あっ桜と樋口君だ」
向こうの方から桜が手を降り、本部席に歩いてくる。
「桜、かわいい」
「千夏ちゃん、髪伸びたんだね」
桜まで言うの?
私が苦笑いしていると樋口君が笑った。
「前田いつもくくってたからだよ」
「そっか」
桜と樋口君っていいペアに思う
「樋口君、桜頼むね」
そう言うと二人は仲良くまわり始めた。
「樋口君だったけ?なかなかカッコいいんだね」
「理沙は一組だからね」
理沙と私はまるで母気分。
嬉しいけど寂しい…なんて変な気持ち。